永住ライフ オフィシャルブログ Header Image

自分の仕事

ついに、会議の日がやってきた。

マネージャーから会議に参加するように言われてから、毎日、落ち着かない日々を過ごしていた。

大好きなサーフィンに行っても集中できないし、アンドレアスと話していても頭の中では会議の日のことについて考えていて、よく怒られた。
僕がビジネスビザを取りたいと思っている事を、どうオーナーに伝えよう・・・・

結局、当日になっても良いアイデアはうかばなかった。
マネージャーと2人、車で本店に向かう間もずっと考え事をしていた。

「おい、永住ライフ。お前ずいぶん緊張しているようだな。」
「うん、オーナーに会うのは初めてだし、会議に出るのも初めてだからね。」
「お前は、自分の仕事をすればいいんだよ。」
その時は、よく意味がわからなかったけれど、僕はうなずいた。

本店について会議室に入ると、本店のマネージャーや古株のスタッフ達は
もう椅子に座って話をしていた。
一人のスタッフが立ち上がり、ニコニコしながら握手を求めてきた。

「俺はマーカス。お前が永住ライフか、ずいぶん商品を売ったらしいな。よろしくなっ!」

すごくフレンドリーで、いい笑顔をしている。
僕はすぐにマーカスの事が好きになった。

僕がマーカスと話していると、大きな身体をした意思の強そうな女性がゆっくりと部屋に入ってきた。その女性が持つ雰囲気から、すぐに彼女がオーナーであることが判った。

オーナーは軽く挨拶をした後に、すぐに会議を始めた。
いろいろなサーフブランドの商品がハンガーにかけられ、机の上に置かれ、それぞれの商品について、みんなで意見を出しあって、今期の仕入れ分に入れるか、そうでないかを決定する重要な会議だ。

他のスッタッフやマネージャー達は、それぞれの意見やアイデアを次々に発言していたが、僕はその場の空気に緊張をして何も言う事ができなくなっていた。

次の議題のブランドは、まだ僕らの店には入荷のない商品で最近、日本でも
人気がでてきているブランドについてだった。

「みんな、このブランドについてどう思う?」
オーナーが、みんなに問い掛けるとマーカスが発言をした。

「僕はこのブランドはうちの店のカラーには合わないし、好きではない。このブランドの取り扱いはしなくて良いと思う。」

僕の意見はマーカスの反対だった。デザインも素敵だし、きっと日本人には売れるはずだ。
でも、この意見を発言するとマーカスの意見に完全に反対する事になる。
でも、言わないと。このまま黙って座っていたら、今日この会議に出席した意味がなくなる。
オーナーが僕を呼んだ意味がなくなってしまう。

「永住ライフ、あなたはどう思うの?」

オーナーが突然、僕の意見を求めてきた。
どうしよう・・・・・・・・・・僕は少し考えてから言った。

「僕はこのブランドは、日本人には売れると思います。だから入荷をするべきです。」

その日の会議で初めての発言がこの発言だった。
緊張していたせいもあって、かなり強い勢いとニュアンスで言ってしまった。
自分の心臓がとてもドキドキしている事に気がついた。

みんなの目が一斉に僕の方に向いた。

オーナーも、マネージャーも、そしてマーカスも僕をじっと見ている。

「永住ライフ、それじゃあ、あなたの意見を取り入れて日本人客の多い2号店には、このブランドをいれましょう。いいわね、マーカス。」

オーナーは、そう言うと、僕とマーカスの両方の顔を見た。

僕の今日の仕事はこれだ。緊張している場合じゃない。

僕は自分の仕事をしなければいけない。

 

僕にできること

次の朝、海に行こうと誘うアンドレアスの誘いを断って僕は店に直行した。
そして、職場に着くなりマネージャーに会いに行った。
ビジネスビザを取りたいという事を早くマネージャーに伝えたい。

「マネージャー、話があるんだけれど」
「なんだ、永住ライフ?かしこまって」

マネージャーは読んでいた新聞を置いて話を聞いてくれた。

「僕、この店でビジネスビザを取りたいんだ」
「うーん、前にも一人、日本人のスタッフがいて、そいつもお前と同じ事を言ってたから
 オーナーに頼んでいたけれど、結局ダメだったなぁ」

 そうか、そんな事があったのか、でも僕は諦めたいとは思わなかった。

「永住ライフ、それにお前はまだ一度もオーナーに会った事がないだろう?」

 そうなのだ、このお店に入る時の面接もマネージャーがしてくれたし、
オーナーは2つの店舗を所有していて、普段は本店のオフィスにいる為に、
僕が働いているお店には来る事がないのだ。

「なんとか、会えないかな?」

僕はマネージャーに聞いてみた、直接会ってお願いしたいと思ったのだ。

「今、お前が会っても同じ事だよ。オーナーはお前を知らないし、お前が何をできるかも
 知らないんだ。お前はよく店の商品を売ってくれるし、日本人への接客はお前しかできない、
でも前にいた日本人のスタッフだって同じように、頑張っていたよ。」

僕は考えてしまった。
マネージャーのいう事はもっともだった、オーナーは僕のことも僕がお店で何をしているかも知らないんだ。
どうしたら、オーナーはビジネスビザを出してくれるのだろう・・・・

その頃、日本ではあるサーフブランドが大人気だった。
みんなが行列をして買ったり、プレミアがつくほどの人気だったのだ。
でも、オーストラリア人にはあまり人気がないみたいで店では日本人が来ると
日本人サイズのMばかりが売れて、他のオーストラリア人サイズはほとんど
売れ残っていた。お店のほかのスタッフからすれば、人気のないブランドだと思われていて、取り扱いの数も少なかった。僕は唯一の日本人だったので、その事実に気がついていた。

そうだ、これだ!
僕はこのブランドを沢山売って、オーナーに僕の事を知ってもらおう。
お店の物がたくさん売れればオーナーも喜んでくれるし、
きっとビジネスビザをだしてくれるぞ。

その日から僕は、そのブランドを売りまくった。
うちの店の在庫がなくなるとマネージャーに頼んで、本店から全てのS,Mサイズを
持ってきてもらった。
最初は半信半疑だったマネージャーも店の売上があがったので、とても喜んでくれた。
僕自身、商品が売れるのも、マネージャーが喜んでくれるのも、
お客さんが喜んで買っていってくれるのも嬉しかった。

1ヶ月ほどたった頃、お店に行くとマネージャーに呼ばれた。
「おい、永住ライフ。今度の土曜日に来シーズンの商品の仕入れ会議があるの知ってるか?」
その会議は各店のマネージャーや長く働いている数人のスタッフしか参加できない会議だった。

「ああ、会議があるのは知っているよ。」
「オーナーが日本人の立場で日本人が好きな商品や、そうでない商品を知りたいから、
お前にも出席するようにと言っていたぞ」

「えっ、本当に!」

やったー、オーナーは僕の事を知ってくれたぞ!
会えるぞ、オーナーに会えるぞ!

僕はとても嬉しくて、その夜はアンドレアスと2人で遅くまで酒を飲んだ。

新たなる目標

アンドレアスとの新しい暮らしは楽しかった。
引越しをして1週間後に隣の部屋にアンドレアスの大学の友達3人が引越しをしてきて、我が家が非常に騒がしくなったり。
夜中にアンドレアスが酔っ払って壁を壊したり、音楽を大音量でかけたりと、よくケンカもしたが初めての外国人の親友との暮らしは刺激的でもあり、そして彼から学ぶこともたくさんあった。

ある夜、僕はひさしぶり5つの目標を書いたノートを開いてみた。
そこには半年前に、僕が始めてこの国に来る飛行機の中で書いた目標が書かれていた。

1、現地のサーフショップで唯一の日本人スタッフとして働く。
2、英語しか話せない外国人の親友を作り、一緒に暮らす。
3、海の目の前に暮らし、プール、ジャグジー付きで窓から波が
  チェックできる家で暮らす。
4、たくさんの外国人の仲間と出会い、色々な価値観と世界を知り、共有する。
5、オーストラリアでの暮らしが幸せなものであれば永住権をとる。

うーん、懐かしいな。これを書いた日は本当に不安だったなぁ。

今の僕は、まだまだ出来ないことだらけだけれど、現地のサーフショップで働いて,
アンドレアスと海まで歩いていけるプール付きのアパートで暮らしている。
そして、アンドレアスの大学の友達や仕事場のオージーとも仲良く話すことが出来るようになった。
学校ではスイス人、ブラジル人、香港人、トルコ人と沢山の友達もできたし、近所の商店や飲み屋でもたくさんの友達ができた。

「幸せだなー」僕の心の奥の方から勝手に言葉がでてきた。

あっ、今、僕は幸せだと思った。
オーストラリアのでの暮らしが幸せならば永住権を取ると5番目の目標に書いてある。
それなら、ずっとこの国で暮らせるようにしよう。

永住権を取るなら、まず仕事先でビジネスビザをだしてもらおう!
この頃の僕はビザに関する知識がまるでなかったので短絡的にそう思った。
周りにビジネスビザを取得した友人がいたのだ。

よし、次の目標はビジネスビザだ!

今、働いているサーフショップでビジネスビザを申請してもらえるように
明日、マネージャーに話してみよう。

僕の中に新しい目標ができた。

 

子供から大人へ

パーティーに行ってから、僕とアンドレアスは本当によく遊んだ。
週に、2,3回は一緒に波乗りをして、音楽の話、お互いの国の話、家族の話、そして女の子の話。
アンドレアスと会うまでも外国人の友達はいた、でもこんなに自然な感じは初めてだった。いろいろな事で妙に気が合うのだ。
考えてみれば、日本人でも気が合う人と、そうでない人がいる。会った瞬間に昔からの友達のように仲良くなる人もいれば、長年一緒にいるのになかなか仲良くなれない人もいる。
国が違っても、話す言葉が違っていても、人間て同じなんだなと思った。

1ヶ月が過ぎた頃、サーフィンの帰りに突然アンドレアスが言い出した。
「今まで友達の家に居候してたんだけれど、COOLなマンションに引っ越したいんだ。」
「へーいいね!でもお前居候だったんだ?」
「いろいろ探すのが面倒でさぁ、だから一緒に探そうぜ!俺、海の目の前に住みたいんだよ、そしたら歩いてサーフィンに行けるだろ。」

へっ?一緒に!あまりにも突然。


しかもアンドレアスの中では、もう決定しているようだった。
この頃、僕はホームステイしていた家の一部屋を借りて、格安で住んでいた。
以前は仕事もしていなかったので一緒に過ごす時間も多かったのだけれど、
最近は忙しくて、ほとんど顔を会わせることもなくなっていた。

「うーん、そうだな。今日、帰って相談してみるよ」
「じゅあ、今度のお前の休みに不動産屋にいこうぜ!」


やっぱり、もう決めていた・・・・(笑)

僕は、数ヶ月お世話になったマザーに相談してみた。
アンドレアスの事、今までのマザーとの事、そして家をでようと思っている事を。
マザーは優しく、そして少し寂しそうに話してくれた。

「永住ライフ。あなたがこの家に初めて来た頃は、まるで小さい子供のようだったわ。
 あなたの英語は、まるで小さい子供が話しているようだったし、あの頃はよく一緒に話したわね。」
「そうだね、あの頃は学校しか行っていなかったし、よく僕の相手をしてくれたね。」
「でも、今のあなたは英語も話せるようになって、仕事もして、自分で車を運転して、もう自分の事は自分で出来るようになったの。」
「永住ライフ、この国の子供達は高校を卒業したら、みんな家を出て友達や仲間と一緒に暮らすのよ。だからあなたも、そうしなさい。そういう時期が来たのよ。あなたはこの家で子供から青年になったよ。」

僕は嬉しくて、そして少し悲しくて泣いた。
でも、そういう時期が来たと言ってくれたマザーの言葉は本当だと思う。
この国で僕が与えられた時間は1年間だから、僕は急いで子供から大人にならなければ
いけないんだ。

次の日曜日、僕とアンドレアスはメインビーチの海のすぐ側にマンションを借りた。
初めての外国人の親友との2人での生活に、僕はワクワクしていた。

 

COOLにいこう!

夜6時30分になり友人と僕は、アンドレアスが指定したメインビーチのカフェに行った。
外国人のパーティーの作法は良く知らなかったが、手ぶらで行くのも気が引けたのでワインを2本買っておいた。

僕も友人もかなり緊張していた。はじめての外国人のパーティー、そして招待してくれたアンドレアスも、2,3時間前に会ったばかりなのだ。

約束の時間から30分遅れてアンドレアスはやって来た、しかもさっき海で会った時と同じTシャツにジーパン姿だった、何を着ていけば良いかいろいろ考えた僕らは少しこっけいだったようだ。

「おう!来てるなっ。直ぐ近くだから歩いていこう」
OK

どんな、場所に連れて行かれるのだろうと考えながら着いた場所は高層高級マンションだった。このメインビーチというエリアはゴールドコーストの中でもハイクラスなエリアで
その中でも高級そうなマンションの最上階近くの部屋だった。

「すごいなー、君の友達はずいぶん金持ちだなぁ」と言うと
「うん、大学の友達なんだけれど親が金持ちなんだよ」
へっ!お前大学生なんだ。顔全体に無精ひげを生やし、マッチョな体型なのでてっきり年上だと思っていたよ。僕はびっくりしたけど、この時は黙っていた。

部屋に入ると10人位の男女が、リビングのソファーの周りで酒を飲んでいた。
音楽はかなり大きな音でかかっていて、楽しそうにしていた。
「俺の友達の日本人サーファーの永住ライフをつれて来たよ」
アンドレアスは皆に僕らを紹介してくれた。
かなり、緊張していたがなるべく沢山の人と話そうと思い、持っていったワインで酔いが周ってきた頃に何人かに話し掛けた。

それで判った事は、全員が近くにあるグリフィス大学に通う大学生だと言う事、
半分がノルウェー人で、後はスウェーデン人とオージーだと言う事、
ほとんどが国から奨学金をもらって留学していると言う事、
アンドレアスは変わり者だけど、いい奴だと言う事だった。

僕らは、それから10時くらいまで楽しく過ごした。
明日も学校があるので、そろそろ帰ろうとしていると、他の友人と話していたアンドレアスが僕の所にやってきた。

「おい、帰るのか?」
「うん、楽しかったよ。明日早いから今日はもう帰るよ」
OK。でも、それにしてもお前の英語はCOOLじゃないな、俺が英語を教えてやろうか」
確かにアンドレアスの英語の発音は他の留学生達と違い自然なアメリカ英語だった。
「いいよ、俺は通じればいいんだ」悔しかったが僕はそう答えた。
「そうか、じゃあいいけれど、明日一緒にサーフィンに行かないか」
「いこう!いこう!」

待ち合わせの場所を決め、その日は帰った。
次の日になり、待ち合わせの場所に行くと、アンドレアスと昨日のパーティーにいた仲間が3人ほど来ていた。みんなマチョで背が高くスポーツマン風だ。

しかし、海に入るとアンドレスを含め皆が初心者らしく、板の上に立つ事さえできないのだ。筋肉隆々の大男達が波に揉まれているのは、少し可笑しかった。北欧からきたスポーツマン達にはサーフィンは未知なる物で難しいのだろう。
2時間位して皆が海からあがったので僕もあがった。

僕は昨日の英語の発音を注意された事を思い出して、アンドレアスにジョークを言った。
「おい、それにしてもお前のサーフィンはCOOLじゃないな、俺が教えてやろうか。」
アンドレスは大笑いしてから、こう言った。
「俺がお前に英語を教えてやるよ、だからお前は俺にサーフィンを教えろよ。そしたら
 2人ともCOOLになれるぜ。」

その日から、僕らは時間があれば一緒に海に行くようになった。
アンドレスは僕の発音を治し、英語の歌を聞かせたりした。
僕の発音はそれほど良くはならなかったが、アンドレアスのサーフィンは少しずつ上達していった。

 

足に龍を持つ男

念願のサーフショップで働く事ができ、僕の毎日は充実したものになっていった。
午前中は学校に通い、午後は店で働き、そしてお休みの日には大好きなサーフィンをする毎日だ。僕の脳から日本語を捨てよう作戦の時に引っ越したホームステ イ先で、ホストマザーと、ゆっくりと時間を過ごす事はなくなっていったが、それでもマザーは喜んでいてくれた。僕自身も学校でも英語、仕事先でも普通に英 語を使う毎日なので、以前ほど英語についてはそれほどこだわらなくなっていた。

そんな、ある日 ある出会いがあった。
その日は、友人と近くのスピットというポイントにサーフィンをしに行っていた。
2、3時間ほどサーフィンを楽しんだ後、服を着替えていると、身長180cmはゆうにある、がっちりとした金髪の男が話し掛けてきた。ひげを顔全体にはやしていたのでよくはわからないが年のころは二十代の中ごろくらいだろうか。
「お前ら日本人か」 
「そうだよ」
「これの意味がわかるか」 と言って自分のふくらはぎにでかでかと彫られたタトゥーを見せてきた。
そこには「龍」という漢字が彫られていた
「ドラゴンって意味だろかっこいいな」
「わかるかぁ」
その男は嬉しそうにニタリと笑ってから、自己紹介をした。
「俺はアンドレアス、今日友達の家でパーティーがあるんだけど一緒にいかないか?」
はっ?いきなりパーティーに誘うのかと心の中で思ったが、初対面の人間にいきなり自分のタトゥーを見せ、突然友達の家でのパーティーに誘うアンドレアスと名乗るその男が僕は妙に好きになってきていた。

「行くよ、それでどうすればいいんだ」
「それじゃあ、メインビーチのカフェに7時に来いよ、それから一緒に行こう」

そういい残してアンドレアスは帰っていった。
「どうする?」僕の友達が聞いてきた。
「いくよ、約束したし、それになんだか面白そうだよ。外人ばかりのパーティーなんか参加した事ないからな」
「じゃあ行くか」
多少の不安は感じつつも、アンドレアスの豪快さと無邪気さが気に入った僕は、その夜のパーティーに行く事を決めた。

 

望んだものはすぐ近くにあった。

早速レジメを作った。英文の履歴書の書き方は学校で習っていたので問題はなかった。
よし、後は熱意と笑顔だな。明日に備えてその日は早く寝ることにした。

朝になり、僕はなるべく綺麗な服を着て、レジメを持ち、昨日の店に直行した。
「ハロー、すいません。今日はレジメをもってきたのですが」
「今、マネージャーはちょっと他の店にいっているからいないよ。レジメは渡しとくよ」
「できたら、マネージャーさんとお話したいのですが」
「レジメを見てから、こっちから連絡するから 今日は帰っていいよ」
うーん、今日はマネージャーもいないし、これ以上ねばっても逆効果かも。
引き上げるとするか。

でも家には帰らなかった。僕のポケットにはあと4枚のレジメが入っている。
今日中に残り4件の他のサーフショップにも求職しに行くんだ。

次はブラザーニールセンに行った。ここはオーストラリア最大手のお店だ。
「すいませーん、マネージャーさんはいらっしゃいますか?」
今度は最初からマネージャーに頼むことにした。
「ちょっと、まってね。今呼んでくるから」
今回は直接にマネージャーと話すことができた、しかし答えは
「今は募集していないからレジメだけあずかっておくよ」との事だった。
もし、空きがでたらすぐに連絡を下さいとお願いして店をでた。

次のお店も、その次のお店もマネージャーと話すことはできたが 今は募集していないと言われ、レジメを渡して店を出た。最後の店も気合を入れ直してチャレンジしたが、結局同じ答えだった。

うーん。甘くないなー。これで街にある全てのサーフショップに行ってしまった。
あとは待つしかないのだろうか? シドニーでケンジさん〔過去のブログAsk your hartに登場〕と会ってから思い立ったら即行動で、やってきたが今回は次にどうしたらいいかわからない。
何度も自分の心に聞いてみたけど答えはでなかった。
そして、1週間たっても2週間たっても何処のサーフショップからも連絡は無かった。

その頃、僕の学校のクラスが1つ上のレベルのクラスにあがった。
あいかわらず、あまり日本人の他の学生とは付き合いがなかったが、そのクラスには3人の日本人の男の子がいた。どうやら、そのうちの一人が今週で学校を辞めるらしい。
2,3日してクラスにも慣れた頃、その男の子と話す機会があった。
「永住ライフ君てサーファーだよね」
「うん、そうだけれど何で」
「今、仕事とかしてる?」
「ううん、探してはいるんだけれど なかなかやりたい仕事できなくて」
「サーフショップで働いてみる気はない?」
へ?
「実は来月に日本に帰るんだけれど、その前にオーストラリアを旅行したくて、今のバイト先を辞めなきゃ ならないんだけれど、いきなりは辞め辛いから、代わりのスタッフを紹介して辞めようと思うんだ」
「えー!やる、やる、やりたい。俺、働きたい」
「じゃあ 今日、学校が終わったら一緒にお店にいってみようか」
「いくー、いく。お願いします」

学校が終わり、彼と一緒にお店に行ってみると なんと、そこは僕が最初にレジメを持って行った店だった。彼がマネージャーと話をして、僕もマネージャーと話をする事になった。
「僕、1ヶ月位前にレジメを持ってきたんです」
「えっ、ちょっと待ってて 探してみるから・・本当だ、あったよ」
2,3質問をされた後に、マーネジャーは言った。

「彼の紹介だし、これも何かの縁だし、明日から働いてみるかい?」

やったー!最高。5つの目標の最初の1つが現実になったぞ。
あんなにやりたかった事のチャンスが、まさか学校の一つ上のクラスのあったなんて。
望んだ物はすぐ近くにあったよ。

 

募集がなくても行く!

 非常に極端な行動で、短期間で通常レベルでの会話が出来るようになった僕の次の目標は仕事だった。
英語が話せなければなにも始まらない、今ではすこしは話せるようになった!
それじゃあ、5つの目標にあるように、やりたかった仕事に挑戦しよう。

5つの目標には「現地のサーフショップで唯一の日本人スタッフとして働く」とある。
当時、サーファーズの街には5軒のサーフショップがあった。ブラザーニールセンが2件、シティービーチが1件、そしてタウン&カントリーとサーフサベージというローカルなお店。
現在は日本人経営のショップも2,3店できたが、98年当時はこのラインナップだった。

日本でバイトや仕事を探す時には、普通は情報誌を見たり、店頭などに貼ってある求人の張り紙なんかを見て探すのが普通だ。しかし、店の前を何度ウロウロしてみても何処の店にもそんな張り紙はない。

うーん、どこも募集はしていないみたいだな。
募集広告がでるまで待つか。でも、いつになるか分らないし空きなんて、でないかもしれない。
それまで、日本食屋ででも働くかなー、募集していたしな。でも、それじゃ日本と変わらないよ。
よし、勝手に自分から売り込んでみよう!

直接、飛び込みでお店に行ってみた。
「あのー、このお店で働きたいのですが」
「はっ・?今はポジションに空きはないよ」
「空きがでたらで良いから働きたいのですが」
「うーん、今はボスがいないからわからないけど、働きたいなら明日レジメを持ってきなよ」

レジメ?そうだ履歴書だっ。
明日、までにレジメを作って出直そう!
「サンキュー。」 

募集もしていない店に、働きたいと言いにいくのはかなり緊張したけれど、それでもレジメを持ってこいと言われた。よかった、一箇所行ったら、勇気がでたぞ。
よし、明日この街のサーフショップ5店全てにレジメを持って売り込みにいこう!

 

僕の脳から日本語を捨てよう

英語学校に通い始め、家も決まり、サーフィンをする環境も整い、中々に快適な生活が始まった。
しかし、そんな生活に慣れ始めた頃から僕の中に一つの疑問が生まれた。

「こんな、ぬるい生活で本当に英語が話せる様になるのか?」

なぜなら、同じ学校に通う先輩学生達を見てみると、人によってまちまちだが3ヶ月いても半年いても英語が話せる様になっていない人が沢山いるのだ。
だいたい日本人同士でアパートをシェアして、日本人同士で遊んでいる人たちだ。
それって、今の僕じゃないか!

このままじゃ、だめだ。
 
英語ができるように変わってから、周りの環境を変えようと思っていたけどそれでは1年経っても変わらないよ。
だってできない人達と一緒にいるんだもの。

日本語を話すのををやめよう、僕の脳から日本語を消そう!
なぜなら、僕には1年しか時間がない。それに僕は今までほとんど英語を勉強した事がない。
そんな僕が普通の人達と同じ英語学習をしていても、話せるようになる訳がない。

僕は日本語を話す友人との付き合いをやめた、英語が話せるようになるまで友達はいらない。
大好きだった読書も止めた、英語の本が読めるようになるまでは読書なんてしない。
日本から持ってきていた日本人のミュージシャンのCD音楽を聞くのも止めた。
定期的に書いていた、日本の家族や友人への手紙も書くのを止めた。英語が話せるようになるまで家族も友人も連絡しない。

当然、僕は孤立した。だって日本語を話したり、聞いたりするのを止めたからといって
僕は英語を話せた訳ではなく、つまり本当に片言でしか人と接することができない状態になったのだから。

そして、息抜きの音楽や読書もできない手紙も書くことができない状態だ。
僕はひとりぼっちの気分だった。

しばらくは本当につらかった、鏡で自分を見ながら独り言を言ったりもした。
でも、1ヶ月、2ヶ月たった頃から僕の英語は変わり始めた。

あんなに分からなかった、英語がだんだん聞こえるようになってきた。
片言でしか話せなかったのが、考えなくても英語で話すことができるようになってきた。
話せればそれで良いと思っていたので,あいかわらず文法や読み書きはまるっきり勉強していなかったが、スピーキングとリスニングはそんなに困ることがなくなった。

これで何とか、仕事が探せるぞ!いよいよ仕事探しだっ!

小さなハワイ

 一晩、バスに揺られてゴールドコーストに到着した。
うーん、これは小さいハワイだなぁ。

ゴールドコーストハイウェイというメインストリートを挟んで、沢山のお土産物やさんや、飲食店、そしてハードロックカフェに巨泉のOKギフトショップがあり。
高層のマンションや、ホテル、コンドミニアムがビーチサイドにはにょきにょきと建ち並び、水着のままで、カフェではお茶を飲んでいる人たちがいる。
サファー達が裸足でぺたぺた歩いている。
シドニーとは比べようも無いほどのリゾート感だ。

よし、いい感じだ!まずは家を探そう。
日本食レストランの前に張られていた、シェアメイト募集のマンションに電話をかけて
家を決め、落ち着く事ができた。海まで歩いて2分くらいの場所に、そのマンションは
あった。そして、プールとジャグジー付きで週100ドル。
残念ながら、12,3偕建ての3偕なので窓から海は見えなかったが、敷金も礼金も
ないシェア暮らしなので、もっと素敵な場所が見つかったら引っ越せばいいと思った。
その後、本当に3ヶ月で引っ越す事になった。

家が決まったら今度は学校だ!
住む場所は別として、5つの目標を達成する為には英語は必須。
英語が話せなければ、仕事もできないし、外国人の親友もできないし、沢山の仲間と語りあう事もできない。
とにかく、英語が話せなければなにも始まらないのだ。

学校にも通い始め、1週間がたち生活も落ち着いてきた。
その頃から、僕は1つの問題について考えはじめていた