自分の仕事
ついに、会議の日がやってきた。
マネージャーから会議に参加するように言われてから、毎日、落ち着かない日々を過ごしていた。
大好きなサーフィンに行っても集中できないし、アンドレアスと話していても頭の中では会議の日のことについて考えていて、よく怒られた。
僕がビジネスビザを取りたいと思っている事を、どうオーナーに伝えよう・・・・
結局、当日になっても良いアイデアはうかばなかった。
マネージャーと2人、車で本店に向かう間もずっと考え事をしていた。
「おい、永住ライフ。お前ずいぶん緊張しているようだな。」
「うん、オーナーに会うのは初めてだし、会議に出るのも初めてだからね。」
「お前は、自分の仕事をすればいいんだよ。」
その時は、よく意味がわからなかったけれど、僕はうなずいた。
本店について会議室に入ると、本店のマネージャーや古株のスタッフ達は
もう椅子に座って話をしていた。
一人のスタッフが立ち上がり、ニコニコしながら握手を求めてきた。
「俺はマーカス。お前が永住ライフか、ずいぶん商品を売ったらしいな。よろしくなっ!」
すごくフレンドリーで、いい笑顔をしている。
僕はすぐにマーカスの事が好きになった。
僕がマーカスと話していると、大きな身体をした意思の強そうな女性がゆっくりと部屋に入ってきた。その女性が持つ雰囲気から、すぐに彼女がオーナーであることが判った。
オーナーは軽く挨拶をした後に、すぐに会議を始めた。
いろいろなサーフブランドの商品がハンガーにかけられ、机の上に置かれ、それぞれの商品について、みんなで意見を出しあって、今期の仕入れ分に入れるか、そうでないかを決定する重要な会議だ。
他のスッタッフやマネージャー達は、それぞれの意見やアイデアを次々に発言していたが、僕はその場の空気に緊張をして何も言う事ができなくなっていた。
次の議題のブランドは、まだ僕らの店には入荷のない商品で最近、日本でも
人気がでてきているブランドについてだった。
「みんな、このブランドについてどう思う?」
オーナーが、みんなに問い掛けるとマーカスが発言をした。
「僕はこのブランドはうちの店のカラーには合わないし、好きではない。このブランドの取り扱いはしなくて良いと思う。」
僕の意見はマーカスの反対だった。デザインも素敵だし、きっと日本人には売れるはずだ。
でも、この意見を発言するとマーカスの意見に完全に反対する事になる。
でも、言わないと。このまま黙って座っていたら、今日この会議に出席した意味がなくなる。
オーナーが僕を呼んだ意味がなくなってしまう。
「永住ライフ、あなたはどう思うの?」
オーナーが突然、僕の意見を求めてきた。
どうしよう・・・・・・・・・・僕は少し考えてから言った。
「僕はこのブランドは、日本人には売れると思います。だから入荷をするべきです。」
その日の会議で初めての発言がこの発言だった。
緊張していたせいもあって、かなり強い勢いとニュアンスで言ってしまった。
自分の心臓がとてもドキドキしている事に気がついた。
みんなの目が一斉に僕の方に向いた。
オーナーも、マネージャーも、そしてマーカスも僕をじっと見ている。
「永住ライフ、それじゃあ、あなたの意見を取り入れて日本人客の多い2号店には、このブランドをいれましょう。いいわね、マーカス。」
オーナーは、そう言うと、僕とマーカスの両方の顔を見た。
僕の今日の仕事はこれだ。緊張している場合じゃない。
僕は自分の仕事をしなければいけない。
